食育について考える
現在の日本社会は、気軽に食べ物が手に入る一方で、食べ物を生産する現場と、食べる現場が離れてしまい、食の大切さを実感する場が減ってきています。 食料を生産する人と食べる人がコミュニケーションすることで、初めて命の尊さや食べ物を得る喜びを考えることは、大切なことです。

もともと牛乳は、子牛を育てるための食べ物。 人は、牛から命のめぐみを頂くことで豊かな食生活を実現しています。

 

 

 

牛乳の歴史

日本の牛乳の歴史は、古くは7世紀までさかのぼります。酥(そ)と呼ばれるチーズ/ヨーグルトのような乳製品が薬用として用いられていたという記録があります。しかし主に貴族の間で利用されたもので、広く普及するには至りませんでした。

日本の近代酪農は千葉県が発祥の地と言われています。江戸時代享保13年(1728年)、8代将軍徳川吉宗が牛乳を使って乳製品を作らせたことが日本の酪農の始まりとされています。インド産の牛(白牛)を輸入し、房州嶺岡で飼育して白牛の乳から"白牛酪"という乳製品を作り、強壮剤や解熱用の薬として使っていました。 時代が進み明治に入ると、西洋文明に触れ、新しい生活習慣がもたらされる中で牛乳を滋養強壮の糧とする考えが一般庶民にも広まっていきました。牛乳の販売店ができたのもこの頃からです。

第二次大戦後には学校給食の広がり、洋風食生活の進展、さらには製造技術の進歩もあって、牛乳は本格的に一般の食生活に浸透していきました。今日のように多くの人が手軽に飲用できるようになったのは昭和に入ってからのことなのです。

 

牛についてのお話


乳牛の平均的な姿

■1日の牛の食事量
乾草と穀類を合わせて25kg位食べます。
水も平均で1日に150㍑位飲みます。

■1日に出る乳の量
牛の乳房には乳首が4つあります。
一日に搾る乳の量は一頭で20〜30kgにもなります。
(もちろんおっぱいを出す量には個体差があります

■糞と尿の量
糞は一日に平均で約45kg
尿は一日に15~20㍑ にもなります。
糞や尿は、堆肥として利用されます。

 

牛のお乳が出る仕組み

牛も人間と同じく赤ちゃんを産むことでお乳が出るのです。
お乳は子牛を育てるために母牛がつくるものです。

1リットルの牛乳ができるためには、乳房になんと4~500リットルの血液が流れこまなければなりません。 「緑の牧草が、赤い血液になり、そして、白い牛乳になる。」なんとも不思議ですね。

搾乳する乳牛は出産から次の出産までの流れ(12〜15ヶ月)を、3〜4回繰り返します


 

乳量と成分

牛のお乳は季節や環境、によって量や成分にも変化が出てきます。

乳量と乳成分の関係1
乳量が増えると乳成分は下がる。(特に乳脂肪分は顕著)
暑くなると、採食量が減り、乳量・成分ともに下がる。 粗飼料(牧草類等)を多く食べると乳脂肪分が上がり、無脂乳固形分は下がる。 濃厚飼料(穀類など)を多く食べると乳量は増えるが、 乳脂肪分は下がり、無脂乳固形分はやや上がる。

乳量と乳成分の生理的変動要因
夏は、乳量・乳成分ともに低下するが、冬~春は、ともに増える。 分娩から遠くなるにつれ乳量は少しづつ減少するとともに、乳成分は少しずつ増加傾向になる。 搾乳始めは乳成分は低いが、搾乳終了に近づくにつれ乳成分は高くなる。

注)一般的な傾向を述べております。

 

牛乳の知識

 

殺菌方法

健康な牛乳から搾ったばかりの生乳は、ほとんど無菌状態ですが、搾乳時や空気中にある細菌などの外部的な要因で、製品化されるまでに二次汚染します。そこで牛乳工場では、加熱=殺菌する事で細菌を死滅させます。
これは食品衛生法にもとづく「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」( 通称 乳等省令)と呼ばれる法律で義務づけられています。 殺菌方法には、温度、時間の違いから主に3つの種類が存在し、それぞれ特徴があります。

1)超高温瞬間殺菌法 120~140℃ 2~3秒 Ultra-High-Temperature(UHT)  
日本の牛乳の90%以上がこの方法で殺菌されています。日持ちする事や生乳の衛生的品質のリスクを減らせたりするので大量生産に向きます。しかし、85℃~90℃約5分間の予備加熱を経て、さらに120~140℃で殺菌するため強い加熱により生乳中の菌を残らず死滅させる事ができる一方、牛乳の風味や成分の変化を起こすため、特有のにおい(加熱臭)があります。

2)低温保持殺菌方法 63℃~65℃ 30分間 Low-Temperature-Long-Time(LTLT)  
牛乳殺菌方法の元祖です。63℃~65℃と低い殺菌温度ですが、30分間と長いため、HTST法に比 べると風味などの加熱による変化が起こります。また長時間の加熱は処理に時間がかかり一度に 大量生産するのには不向きです。

3)高温短時間殺菌法 75℃15秒 High-Temperature-Short-Time (HTST)
この殺菌方法は、有害菌を完全に殺菌しながら、超高温殺菌法(UHT)に見られる風味の変化やタ ンパク質の熱の変性を最小限に抑えます。この殺菌方法を採用するためには、原料となる生乳中の細菌数が低く、衛生的乳質が良いことが条件となります。生乳の本来の、さらっとしていて、臭いが少なく、 自然な甘みがあります。

4)特別牛乳 無殺菌
日本で唯一殺菌しない事が認められた、「想いやり牛乳」が存在する。

牛乳に多く含まれるカルシウム

カルシウムを多く含む食品は、牛乳・乳製品をはじめ、小魚や海草、豆類や野菜などがあります。
牛乳には、カルシウムが100g当たり110mg含まれています。100g当たりの単純比較で、牛乳より多くのカルシウムを含む食品はたくさんありますが、牛乳は吸収率と利用性の高さにおいて優れたカルシウム源です。 例えば、牛乳コップ一杯200ml当たりのカルシウム量は227mgで、小魚(イワシ)は、1尾60gとしてカルシウム量42mg、ヒジキ(干し)は一人分8gとしてカルシウム量112mgです。このように、一回の摂取量から換算すると牛乳には多くのカルシウムが含まれています。

また吸収率の点でも牛乳は優れています。牛乳・乳製品に含まれている乳糖や、カゼイン(たんぱく質)が消化される途中でできるカゼインホスホペプチド(CPP)はカルシウムの吸収を促進します。そのため牛乳はカルシウムの吸収率が約40%と、小魚、野菜に比べて非常に高いのです。しかも牛乳はそのまま飲めますし、調理性も高い食品です。牛乳を冷蔵庫に常備しておけばいつでも手軽にカルシウム補給ができます。 骨は一日にしてならず。コツコツ予防して、骨の健康を守りましょう。

 日本人平均で長年不足しているものにカルシウムがあり、栄養所要量の87.9%の充足率です。この充足率を性別および年齢別にみると成長期である15~19歳男性で81%、女性で73%です。 また最も不足している年齢は、20~29歳男性で67%、女性で73%と大きく不足しています。

 

※カルシウム摂取の目安量は年齢や性別によって細かく決められています。女性の場合、10~17歳は850~950mg/日、30~40代は600mg/日、50代は700mg/日とされています。

 



牛乳は、蛋白質、カルシウム、脂質、炭水化物、ビタミンなど体に必要な栄養素をバランス良く含んでいます。 その上、カルシウムの吸収率も他の食品に比べて高い高機能食品です。


牛乳の効用